透明図
それでも私は、死にゆく鳩の事は気になった。

家に帰るなり着替えて、自転車にまたがると母が聞いた。

「晩御飯までには、帰ってくるの?」

「日が沈む前には帰るよ。今夜は焼鳥がいいなぁ」
自分で言って少し後悔した。

さすがに鳩の死に心を痛めるサキになんだか悪い気がして心の中で手を合わせた。

気付くと、母が少し怪訝な顔付きになっていた。

「最近、よく鳩が死んでて不気味なのよね。まぁアンタには関係ないかもしれないと思うけど、気をつけてね。」

母の心の設計図が少し暗くなる。

私は、もう一度心の中で手を合わせた。
ごめんね、お母さん。危ないことはしないよ。
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