透明図
用水は浅く、ほとんど干からびているように見えた。
そこに無数のカラスが群がり、一時のご馳走を蝕んでいた。

カラスは好きずきに鳩の屍をついばみ、羽を広げて歓喜の声をあげる。

その光の刺さない暗い光景は、まるで朝に見てしまった、藤橋ユウヤの心の設計図を思いださせた。

見る者をぞっとさせるような、暗い光景。

一羽のカラスが鳴き、複数のカラスがそれに答える。そしてまた一羽カラスが現れる。

私は、ここにきて余計な好奇心を起こしたことを後悔した。

心の中で、もう一度手を合わせて悲しい鳩のことを想った。

そして、青空が恋しくなって空を見上げた。

私の透明図は、相変わらず沈黙を貫いたままだった。
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