涙が出るほど愛してた
彼は、弱音を次から次へと吐き出していった。ついには涙まで出てきた。おいおい待て!泣かれたら困る!…正直な気持ちだった。
どれくらい話をしたかな?気が付けば空がうっすら明るくなり始めていた。
「里香、ありがとうね。俺が泣いた事は内緒だよ。恥ずかしいからね」ってやっと笑ってくれた。
私は彼の心が軽くなった事が嬉しかった。
「里香」、彼が名前を呼んだので彼を見た。その時彼は私にキスをした。私はビックリした。
「彦さん、結婚しているのにキスはダメだよ(笑)。でもね、明後日、違うか、もう明日になるけど、ちゃんとかっこよく吹ける様に私が魔法をかけてあげる。これも内緒だよ。」と言って、彼の右手にキスをした。「上手く指が動きますように。彦さんの不安が無くなります様に…」願いを込めて大切な右手にキスをした。
私はごまかすので必死だった。「あぁ~あ、今日は寝ないで出勤かぁ。授業も詰まっているし、頑張ってみますか~!念願かなって教師になれたんだから、今は頑張らないとな~」とか言いながら、必死に笑っていた。
彼はもう一度私の名前を呼んだ。今度は振り向かなかった。だけど、彼は私を抱き締めた。私は、初めて彼を意識した。今まで「仲間」だった彼を男として意識した。私はそっと抱き締めている彼の手に手を乗せた。言葉は無かった。ただ抱き締め合っていた。
気が付けば辺りは朝になっていた…。
「学校…、遅刻しちゃうよ。彦さん生徒指導でしょ?私、今日は校門番長!帰ろう」
やっと彼は私を離してくれた。

この時から始まっていたんだよ…。

気づかないフリしていたけど、二人の恋は始まっていたんだよ。
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