愛しい遺書
「ママじゃねぇよ。作るから起きて」

あたしは冗談でキレた。

「はーい」

明生は悪戯っぽく笑いながら言った。



焼きたての目玉焼きの黄身を潰し、めんつゆを入れてぐちゃぐちゃにしてご飯に乗せ、美味しそうに食べる明生を見ているだけで、あたしはお腹いっぱいになる。

「なぁ、この肉じゃがまだいっぱいある?」

即席で作った肉じゃがを食べながら、明生が言った。

「あるよ。持ってく?」

「うん。昼食うから」

「ご飯は?」

「がっつり食ってられねぇからなぁ」

「おにぎり作ろうか?」

「マジで?じゃあ頼むわ」

「昼持ってく」

「うん。よろしく」

そんなやり取りをしていると、明生の携帯が鳴った。

「本田さんだ」

そう言って明生は携帯に出た。本田さんは明生の仕事仲間で、明生の仕事は美容師。美容院には所属せず、本田さんと二人で組んで、客の家に出張したり、仕事場とする自分の家でやったりしている。エクステはもちろん、ドレッドやブレイズ、コーンローなどの特殊ヘアを専門にやっていて、リピーターも多い。その技術料を本田さんと折半し、生活している。内容にもよるが、週に5〜15人の客を相手し、1人約2〜10万。美容院に雇われるより収入になるらしい。

そして明生の周りにまとわりつく女たちの大半が明生の客なのだ。元々は客として接触し、そのままいい感じになってしまう。明生が仕事だと聞くと、男であって欲しいと、願わずにはいられない。でもそれはあたしがどうこう言える立場じゃない。

「本田さんもう家の前にいるって」

そう言うと明生は残っているご飯を掻き込んだ。

「ごちそうさま。じゃあな」

そう言うと立ち上がり、玄関に向かった。

「じゃね」

あたしもそう言って玄関で見送った。



朝食を済ませ、後片付けをすると煙草に火を付け、マナカにメールを返した。

『おはよー

梗平といい感じだって

よかったじゃん

うまくいくように願ってるよ

あたしは翔士に送ってもらって、その後解散みたいな

でもあたしにしては珍しく、また会う約束しちゃった

また進展があったら教えるね』
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