愛しい遺書
驚きながら近寄ってきて、ハグしたのはマナカ。ここはマナカが働く店。マナカは翔士と一緒にいるあたしを見て、嬉しそうな顔をした。

カップルが何組かいるからか、それとも慣れているのか、翔士はキョドることなくあたしについて店内を回った。おかげであたしは気を使わずゆっくり見る事ができた。

「これさっき入ってきたばっかり!」

マナカは店の奥から大きな段ボールをズルズルと引きずりながら出てきた。あたしはしゃがんで中を覗くと、夏物のミニワンピがデザイン豊富に入っていた。あたしの脳は完全に買い物モードに入ってしまった。ベルスリーブとドルマンスリーブのオフショルダーミニワンピ。あたしは鏡の前で何度も繰り返し会わせていると、「どっちも似合う」と翔士が言った。

「貸して」

そう言って翔士はあたしからワンピを2枚受け取ると、マナカに預けて財布を出した。

「いくら?」

あたしは驚いて翔士の手を止めた。

「ダメ!あたし買うから」

あたしは慌てて財布を出した。すると翔士は逆にあたしの手を止めた。

「いいから。オレに買わせてよ」

「でも……」

「……また会う口実。今度着て見せてよ」

マナカはあたしたちをニヤニヤしながら見てた。

「マジ羨ましいんだけど!キキ、甘えちゃいなよっ」

そう言うとレジに持って言った。

「オレともう会う気ない……?」

翔士はあたしの顔を覗き込んだ。あたしは首を横に振った。

「じゃあ、遠慮すんなっ」

安心したように翔士は微笑み、金を払った。

「ありがとう」

あたしは素直に喜ぶ事にした。





マナカと別れ、店の外に出ると、あたしはもう一度翔士にお礼を言った。

「ごめんね?翔士も一人暮らしで色々お金かかるのに……」

「だから、気にすんなって!オレ意外と金あんだ」

翔士は煙草に火を付けて言った。

「……なんで?」

あたしは聞いた後、変な事を聞いてしまったと思った。

「……なんでだろーな」

翔士は一瞬溜めて受け流した。あたしはそれ以上は聞かなかった。


「晩メシどーする?食ってってもいーし、家で食ってもいーし」

< 85 / 99 >

この作品をシェア

pagetop