お嬢様と執事さん


「あぁあ~、楽しかった♪」


お客様が帰って、紗依ちゃんや未来ちゃんたちも帰ったあと、私はまだドレスを着たまま、連さんとパーティー会場に残っていた。


「お嬢様」


「ん?」


「私と一曲、踊って頂けますか?」


連さんはまるで王子様のように膝まづき、私の手をとった。


「はい……───」








演奏者はいないパーティー会場。オルゴールの音色だけで、くるくる、くるくる……連さんとは練習で何度も一緒に踊ったのに、すごく、すごく楽しい♪


「お嬢様、とてもお上手になられましたね」


「たくさん練習したもん♪」


にこにこと満面の笑みで答える。連さんも楽しそうに微笑んでくれた。


パーティーでたくさん踊ったはずなのに、連さんとのダンスは、時を忘れてしまうほど、いつまでも、いつまでも踊った。


気づいた時は深夜12時。鐘の音で私と連さんのダンスは終了。


まるでシンデレラみたい。


ガラスの靴を忘れることもなく、魔法が解けるわけでもない。だが、このまま、時が止まってしまえばいいと、初めて感じた。








< 70 / 95 >

この作品をシェア

pagetop