恋スル運命
生まれてから一度も出た事の無かったちいさな村。





私の生まれ育った場所。





春や夏になれば一面緑の広がる草原。


秋は家から見える近くの山の紅葉がとてもきれいだった。





でも





きっと、2度と見ることは出来ない。






今日、私はここから遠く離れた場所へ行く。






ヴェルレール家のご長男・ジョージ様に見初められて、





お嫁に、行く。





だから、きっと、2度と帰って来れない。









「ユーリも車に酔ったんじゃない?外の空気を吸うといいわ」





外の空気を、




生まれた故郷の景色を、一緒に見よう?




見納めになるだろうから、忘れないように、ね?




私の言いたい事を理解してたユーリは、はい、と返事をして私と同じ窓から少し顔を外へ出して見ていた。




「ごめんね」




ユーリにしか聞こえないくらいちいさな声で謝った。




私のお付きとしてユーリまで巻き込んでしまってごめんね。




ユーリにはまだ小さな弟がいて、とても可愛がっていたのに。





その弟と私のせいで会えなくなるなんて、本当に、ごめんね。




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