身代わり姫
「国王様、もうこれ以上は出発を遅らせることはできませぬ。ビーワ国に使者を送り、グラディス王女は結婚できないと伝えるべきです」


一番年長の、長老とも言える大臣が重々しく言いました。


「できる訳がないだろう! 婚礼間近になって、どんな理由をつけて断るというのだ!」


国王は声を荒げて言いました。悪魔に呪われたので結婚できないなどと、言えるはずがありません。


「では、これからどうなさいます?
いつまで経っても王女が来なければ、ビーワ国が怒りましょう。ビーワ国王は普段でこそ温和だが、内は気性の激しい荒々しいお方。王子を愚弄したと攻め込んでくるやもしれませぬ」


国王はぐう、と唸りました。

でも、一国の王女が呪われたとは言えませんし、言いたくもなかったのです。


「どうしたものか……」


国王と大臣たちは、眉根を寄せて、重い溜め息をつきました。


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