身代わり姫
グラディス王女はナイフを振り回しながら、部屋の隅までレオノーラを追い詰めました。


「王女様、お止め下さいませ。お願いします、お止め下さいませ」


涙を浮かべてお願いするレオノーラを、グラディス王女は顔色がどす黒くなる程に憎く思いました。

何てこと。
何てことなの。

あの時、謁見室で見た時よりも、もっと垢抜けているじゃない。
赤みのあった髪は、今やグラディス王女よりも美しい金髪になっており、きらきらと光を放ち、肌は益々白く艶々としておりました。
薄紫色の瞳は、深みを増しています。
そしてみんなが言っていた、かぐわしい甘い香りが、王女の鼻をかすめました。


悔しい。悔しい。


「……でも、これで終わりよ!
さあ、死になさい!」


グラディス王女は、渾身の力を込めて、ナイフを降り下ろしました。

レオノーラが絹を裂くような悲鳴を上げました。
その刃がレオノーラの胸を深く突いた、と思ったのですが、グラディス王女がナイフを突き立てたのは麻の袋でした。

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