からんころん
「本当ですか?ありがとうございます」
晴紀みたいなお兄さんがいたらいいのになとずっと思っていたから、そう言ってもらえて実果子は嬉しかった。
「お兄さん…としてじゃなくてさ…」
「え?…あ、誠也くん!」
「せいや…くん?」
偶然誠也も図書館に来ていた。
「塾で一緒だった子です。一緒に辞めた…」
誠也も実果子にきづいた。
実果子は小さく手を振った。けれど誠也はすましている。
「無愛想なやつだな」
「でも根はいい子なんですよ。…ちょっと行ってきていいですか?」
「…いいよ」
もう会えないと思ってた。
なんだか嬉しくて実果子は誠也のところへ行った。
「何探してんの?」
「馴れ馴れしく話しかけんな!彼氏に誤解されるぞ!」
「彼氏?…ああ、あの人は千夏ちゃんのお兄さんだよ。家庭教師やってくれてるの」
「そうなのか?ふーん。じゃあこんなことしても平気なんだ?」
そう言って誠也は実果子の肩を抱いた。
「ちょ、ちょっと…!」
「いててて…」