世界一長いラブレター


20分くらい経った頃

「はいっ出来たっ!」
「鏡見たいよ」
「まだだめ~っ!もう一回頭洗うから洗面台来て。」
「…うん」

僕は自分の頭が気になって仕方がなかった。

「熱くないですか~?」
「大丈夫です。」
「はーいっ」

美容師の真似をするあやを見ていると、愛しく思えてしかたがなかった。

「はいっ。終わったよ」
「ありがとー」
「次ドライヤーね」
「うん」

ブォン

「熱くない?」
「うん、平気」
「てか遊汰ってなかなかヤンキーっぽいけど、やんちゃしてるでしょ」
「まあね…」
「女遊びしてそーっ」
「してないよっ。女の扱い方良く分かんないし」
「えー?そう?」
「今は年上で明るくて綺麗な女の人が気になってる。」
「ん?何?」
「なんでもないよ」

ドライヤーの音で聞こえなかったのか、聞き直してきたあやに言い直すのは、なんだか照れ臭くてやめた。

「はーい乾いた!セットして良い?」
「良いよ。」

あやは僕の髪をたてていく。

「かんせーいっ」
「鏡!みしてよ」
「はいっ」

僕は鏡を見た。前までの長い前髪はなくなり、色を抜いた髪が爽やかに見えて、今までの僕とは思えなかった。

「…」
「気に入らなかった?」
「すげぇ」
「え?」
「すげぇ!あや、美容師に向いてるよ!」
「そう?まだ1年だしあと2年もあるよ」
「あやなら絶対なれるって!」
「ありがとう」

あやが僕にコーヒーを渡して、ソファに2人で並んで座る。心臓がドキドキしすぎて、あやに心臓の音が聞こえてしまいそうな位だった。

「ねえ、アドレス教えてよ。」
「良いよ。」
「じゃあ赤外線で」
「うん。送るね」
「はあいっ」

「あや。」
「ん?」
「俺も美容師になる」
「…」
「あやと同じ専門学校行く!」
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