君とはじめて。〜契約恋愛〜

「え?何で知ってるの?」

「うちのぱぱがいってたの。朝倉社長が帰ってるって言ってたし、奈緒会えたかなーって」

「…ううん。会えなかった。」

「…え?…そっか…。」


-会えなかった…。
父親に会いたくても会えないだなんて、おかしな話だ。
あたしの家の歯車なんて当に終わってる。

「どれくらいもう会ってないの?」

有紗が心配そうに尋ねた。

「…一年ぐらいかな。一年前あったときは10分もしないでまた帰ったけどね」

奈緒の父の拠点はアメリカ本部ニューヨーク。
海外暮らしの父と日本で母と暮らす奈緒は一年に3回会えればいいほうだ。
そのくらい、親子だというのに会えていない二人。


ー…そう。奈緒は小さい頃から親の愛情を注いで育てられた記憶がない。
あったとしてもそれは3歳までという身近な年月。
奈緒が3歳の頃、事業に発展をみせた朝倉グループ。
それからは吐き気がするくらい忙しい両親達をみて育ってきた奈緒。父はニューヨークに拠点をずらし、母と暮らしていても一日数回しかあえない日々。

そんな環境で育った奈緒は人一倍自立心が強く、そして暖かい家族にとても憧れて育ったのだ。


お金なんて奈緒の手にはいくらでも入る。
だが、両親の愛情を手に入ることはない。そう確信しているのだ。
誕生日はプレゼントと豪華な食事とパーティ。だが、そこに母がいても父はいない。
クリスマスやたくさんのイベントを家族共に過ごした記憶すらもう奈緒にはないのだ。



< 15 / 42 >

この作品をシェア

pagetop