君色 **空色**
「でもムリ~!!!」


私がそう叫ぶのはリフトの近く

早めの夕飯を食べた後に私が連れてこられたのは、第一リフトを降りたところだった

リフトに乗る前から、かなり躊躇した私だが、彼の「行こうよ」と言う顔と言い方に負けてしまったのだ


「大丈夫だから!こけても痛くないって、雪の上だし……ゆっくり滑れば楠木だって滑れるよ?」

「でも高いって!!下界が遠いって!!」


だいたい、私は高所恐怖症だって言うのにこの仕打ち……

照明はついているものの、夜という状況がいっそう私を不安にさせる


「ちょっとだけ!ちょっとだけ滑ってみよ!!」


「う゛~」と唸る私に、彼は根気よく斜面を滑らせようと試みている

突然彼は何かを思いついたように、私から少し離れた所まで滑り下りていく


「ほら、ここまで!!」


そう言って、彼は両手を横に広げて私を見上げた


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