マチルダ
「マチルダ、終わったわ」
またしても勢い良くマチルダの部屋の扉は開かれる。
「おかえりなさい、ミシェル!今日は上手くできた?」
「えぇ、もちろんよ。それよりお庭へ行かない?真っ赤な薔薇が咲いたの」
「うん!」
ミシェルはまだ子供。
マチルダといることが純粋に楽しいと感じることもあった。
けれど
「まぁ…きれいね!ミシェル」
「えぇ…。」
屋敷の庭ではちょうど大きな薔薇の花があふれんばかりに開花していた。
薔薇の木は迷路のように続き、まるで赤い壁のようになっている。
家政婦が水をあげたばかりだったため、薔薇は雫を垂らしながら美しく咲いていた。
そして、その美しさを引き立てるかのようにトゲやツルが絡み合っている。
まるで
マチルダのよう
美しく
儚く
ミシェル以外に触れることを許されない
無理矢理触れると、トゲが刺さってしまう。
「ねぇマチルダ」
そう言ったときのミシェルの顔は意地悪な顔をしていた。