マチルダ


「…え?」


この時、マチルダの胸はゾクリとした。

前にもミシェルは同じ顔をしたことがある。


意地悪な、あの目。
口角が少し上がった笑み。


マチルダの目は恐怖に染まり、一歩後退りした。

するとミシェルは薔薇の花を茎ごと千切り、一歩ずつマチルダの方へとやってくる。



…怖い。


マチルダは本気でそう思った。

きっと、バイオリンのレッスンが上手くいかなかったんだ。

レッスンが上手くいかない日は、マチルダの不幸の日でもあった。



「あらマチルダ、どうして逃げるの?一緒に遊びましょうよ」

「…でも…ミシェル、あなた怖い目をしてるわ…」



マチルダは逃げられない。

なぜなら家政婦もメイドもみんな、ミシェルには逆らえないから。

見て見ぬ振りをして

みなマチルダを哀れむのだ。




ぐいっ!

ミシェルがマチルダの細い腕を掴んだ。





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