マチルダ
美しき薔薇は朽ち果てて
家政婦の手によって摘まれ
香り高い紅茶の葉になる
「ねぇお父様」
「ん?どうしたミシェル」
ミシェルは父の膝に抱かれ、細い目をした。
「そのローズティー、血の味がするでしょう」
「血の…味が?」
父親は顔をしかめた。
「マチルダの、血の味」
ミシェルの陰険な笑顔に、暗い部屋を緩くオレンジに照らすシャンデリアが光と影を落とした。
「また、虐めたのかい」
父親は飲もうと持ち上げたティーカップを、皿の上に戻してそう言った。
「虐めてなんかないわ。可愛がってあげたの。あの子には私しかいないから」
「そ…うか。…ミシェルは優しいんだな」
「ふふっ…そうでしょう」