紺碧の地図
「ちっ…、わかったよ!捕まんのだけはご免だぜ」
お頭は本当に悔しそうに顔を歪ませると、そう吐き捨てて立ち去った。
ロイは深いため息をついてから、剣を鞘に収めた。
…すると。
「馬鹿者―――ッ!!」
「ぅ、わっ!?」
どさっ、と鈍い音と共に、ロイが倒れ込んだ。
その上には、勢い良くロイに体当たりした…アルザ。
「このっ…、馬鹿ロイ!阿呆!」
「い、痛っ…、アルザ様?」
ポカポカとロイを叩くアルザの腕の動きが止まると、ロイは不審そうに眉をひそめた。
俯くアルザの肩は震えていて、零れ落ちる涙が、ロイの服に染みる。
「馬鹿…阿呆…」
素直に泣き喚けばいいのに、意地っ張りなアルザは、ただロイを罵るだけ。
「…アルザ様」
アルザは返事をせず、代わりに鼻を啜った。
そんなアルザを見て、ロイは優しく瞳を細めてから、続けた。
「俺…知ってました」