月影
あたしが心から望んでいることって、何だろう。


岡ちゃんが帰ってもまだ、考え続けていた。


それでも、考えても考えても、よくわからなかった。


ただ、拓真を裏切っている気分にさせられた。



「どう思いますか?」


視線を顔をあげると、店長はいぶかしげにパソコンの画面を見つめていた。


最近のこの人は、何故かあたしに意見を求めたがる。


本当は自分の中で答えを出していたとしても、それでも試すように何かにつけて問うてくるのだ。



「彩さんの前借りは3度目です。」


理由はジルだろう。


もちろんそんなことは言えなかったけれど、店長は彼女が男に貢いでいることくらい、お見通しのようだ。


けど、相談だってされていないし、もうあたしの関わるようなことではなかった。



「自分の働いたお金でしょ?」


「えぇ、だから問題はないんです。」


ただ、と彼は、眉を寄せた。



「みちるさんに借金を申し込んだようですし、それは問題でしょう?」


さすがに、目を見開いた。


アイズの中での金の貸し借りはトラブルの元であり、ご法度だ。


彩だって、そんなことくらい知っているはず。

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