テディベアは痛みを知らない
人間だってわかりきっているくせに、なんて態度だろう。

見た目もさることながら、性格もすごく悪そうだ。

「帰る」

私はぼやいた。くるりと背を向ける。

そもそも私は、そこの栗毛くんに無理やり連れてこられたんだし、こんな晒し者みたいなの理不尽だ。

「あ、待って待って」

立ち上がった栗毛くんが、私の右手首を掴んだ。

リストバンドは、まだ少しずれたまま。

傷口に彼の人差し指が当たって、痛みが走った。

「ッ!!」

「っと?」

強引に振り払って、左手でビンタを食らわせてやろうとしたけど、止められた。

『できた』風な笑顔が、またそこにある。

まるでテディベア達の保護者みたいな柔和さだ。

「壮馬、彼女、見てやって」

と栗毛くんが後ろへ首を向ける。

壮馬は、長い指を器用に動かして、クマの背中を繕っていた。

「見るって、俺が、だれを、どう、なんで?」

手元に集中した眼差しで、その言葉は、中身のないすかすかな声だった。
< 10 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop