しょうがい
「なぜ僕について来るんですか?」

僕が発する言葉は、今まで自分の背後をつけていた、例の彼女に対するものであった。彼女とはバス亭で別れたはずなのに、僕はずっと気配を感じていた。その感じの真偽を確かめるため振り返ってみると、案の定、彼女は僕の後ろについて来ていた。わざわざ家まで彼女をつけさせたのは他でもない。もしも彼女がなんらかの不吉を届ける、言わば危険人物だった場合、すぐに対応出来るように自分の家の前まで早歩きでやって来たのだ。

「あ、あの、その……」

彼女は僕に気付かれたのが意外だったようで、ずいぶん動揺している。しかし彼女の尾行は、彼女自身が驚くほど見事なものではない。よってここで彼女が驚いているのは、尾行がバレたということよりも、何か他の理由からだと考えられる。

「別に怒ってるわけじゃないんですよ。何か僕をつけた理由があるのなら、それを説明して下さいと言ってるんです。あなたが悪い人には見えないし……、もしかして僕に用事があるんですか」

僕は大きな声で言った。それというのも、彼女が相変わらず動揺した様子で、全く話が前に進まないからだ。

「い、いえ、その……」

しかし彼女はそんな僕の態度により、逆に動揺を大きくしたようだ。そのおかげで数分間、そんな意味のないやり取りが続いた。
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