しょうがい
「それより、いつまでもここで話し込んでいる暇はない」北沢はハッと何かを思い出したかのように言った。「たとえお前が行くつもりがなくても、俺が無理やり病院まで連れていってやる」

彼は僕の手を力強く握り、その力で僕の体を引っ張っていった。僕は全く乗り気でなかったが、仕方なしに彼についていき、病院へ向かうことを決意した。

北沢はもう一方の手に携帯電話を持ち、電話をかけはじめた。

「もしもし、親父……ああ、今すぐ車でコンビニまで来てくれないか。うん……うん……、まあ、そういうことさ。なるべく急いでくれ、頼むよ」

彼は手早く電話をかけおえると、僕に数分間待つように指示をした。僕は黙ってそれに従った。

数分後、約束通り彼の父親が黒い車に乗って現れた。車はトヨタのレクサスLS460で、外観はきれいに磨かれ、車特有の美しさを醸し出していた。

「お前の親父さん、いつの間に車買い換えたんだ?」

僕は単なる興味本位で尋ねてみた。

「そうだなぁ、一、二年前くらいだったと思う」

彼はそう言うと車の後部座席の扉を開け、僕に乗るように指示をした。またもや僕はその彼の指示に従い、車に乗り込んだ。北沢は助手席に乗った。車内は居心地が良く、思わず眠ってしまいそうになった。
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