しょうがい
しばらく経つと、病院に到着したらしく、車はブレーキ音とともに停車した。目の前には白く、壮大な建物がそびえたっている。

「さあ、急ごう橋本君」

軽快な足取りで車から降りようとしている北沢の父が言った。北沢も北沢父も、どうやら僕の『養母』をひどく心配してくれているらしい。僕はそんな彼らの後ろについていくような形で、病院内へと入っていった。

病院内は恐ろしいほど静まりかえっていた。夜遅いということもあるのかもしれないが、病院という場所はその大部分が、沈黙という名の膜に包まれているものだ。看護師達は無表情に廊下を行き来し、患者達はいかにも心配そうな表情で近くの椅子に腰を下ろしていた。

北沢父はそんな周りの様子になど目もくれず、真っ直ぐに受付へと向かった。

「……手術中だとさ」

北沢父は受付での話済ませ、こちらへと向き直った。そして僕らを連れて手術室へ向かおうとした。

「おい、どうしたんだ橋本君?」

北沢父が怪訝そうな表情で言った。それというのも、彼ら親子は懸命に手術室へ向かおうとしているのにも関わらず、僕がいきなりその歩みを止めたからだ。

「僕はここで待つことにしますよ。僕が行っても一緒でしょう。手術の結果に関わるわけでもない」
< 36 / 53 >

この作品をシェア

pagetop