しょうがい
「お前、いい加減にしろよ!」隣りで僕の発言を聞いていた北沢が、ひどい憤りとともに叫んだ。「何でそんなに家族を避けるんだ。どうしてこんな時にそんな客観視が出来るんだよ。お前の母親なんだぞ」
僕は昔からの友人が、これほどまでに怒りをあらわにするのを初めて目にしたため、多少たじろいだ。しかし自我が強い僕は、そんな彼の言葉一つで心変わりするようなことはありえなかった。
「母親なんかじゃないさ」
僕は思わず口にした。直後、「しまった」と心の中で叫んだ。もしかしたらこの発言により、僕が養子であることを北沢が知ってしまう結果となることを懸念したのである。しかしながら、それも杞憂に終わった。
「母親じゃないだと。よくもまあ……。それならいいさ、大地はそこでそのまま突っ立ってろよ。俺達は手術室の前まで行って、この親不孝息子の母の無事を、手術が終わるまでずっと祈っているからさ。さあ、こんな奴ほっといて、行こうぜ親父」
北沢はそれだけ言うと、自らの父を引き連れ手術室へ向かった。その際、一度も僕の方を振り返ることはなかった。
僕はただ黙って、まさしく彼が言ったような形で突っ立っていた。時計の針が動く音が聞こえる。秒針は刻一刻と時を刻み、それが一周すると時計の中で最も長い分針が、度数にしてわずか6度だけ動いた。僕はただ立っている。
僕は昔からの友人が、これほどまでに怒りをあらわにするのを初めて目にしたため、多少たじろいだ。しかし自我が強い僕は、そんな彼の言葉一つで心変わりするようなことはありえなかった。
「母親なんかじゃないさ」
僕は思わず口にした。直後、「しまった」と心の中で叫んだ。もしかしたらこの発言により、僕が養子であることを北沢が知ってしまう結果となることを懸念したのである。しかしながら、それも杞憂に終わった。
「母親じゃないだと。よくもまあ……。それならいいさ、大地はそこでそのまま突っ立ってろよ。俺達は手術室の前まで行って、この親不孝息子の母の無事を、手術が終わるまでずっと祈っているからさ。さあ、こんな奴ほっといて、行こうぜ親父」
北沢はそれだけ言うと、自らの父を引き連れ手術室へ向かった。その際、一度も僕の方を振り返ることはなかった。
僕はただ黙って、まさしく彼が言ったような形で突っ立っていた。時計の針が動く音が聞こえる。秒針は刻一刻と時を刻み、それが一周すると時計の中で最も長い分針が、度数にしてわずか6度だけ動いた。僕はただ立っている。