しょうがい
そしてここから先が、僕が感じた不吉の真意である。妙な歩き方の彼女は文字通り妙な歩き方をしているため、しっかり前を見て歩けていない。そのせいで彼女は度々、廊下を歩いている他の人とぶつかりそうになっていた。僕が感じた不吉はそこにある。

しかし、なんとか彼女はぶつからず、僕の近くまでやってきた。僕はひやひやしながらその彼女の行く末を見守っていた。ところが次の瞬間、そんな僕の予感は現実のものとなってしまった。

こんな夜遅くには似つかわしくない、小学校低学年くらいの少年が、逆方向から彼女が歩いてきている方に向かって走っていった。少年にしてみれば、彼女が上手く隅へ避けてくれると思い、わざわざ廊下の中心を走っていったのかもしれなかった。しかし、運が悪いことにその時彼女は足元を確認中で、正面から少年が走ってきていることには気付いていなかった。

ゴツンと(実際そんな歯切れの良い音はしなかったのだが)、彼女と少年は衝突し、その場に倒れ込んだ。その衝撃により、彼女は手に持っていた処方箋と見られる薬を床に落とした。薬は袋から飛び出し、ランダムに散らばった。

てっきり、少年は転んだショックで泣き出してしまうと思ったのだが、意外にも近頃は珍しい、強い精神力を持った子らしく、何も言わずに立上がった。そして先ほどまでと同じように、さらに向こうへと走り去っていった。
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