しょうがい
一歩一歩が、なんだか重く感じられた。吸い付くようにして、地面が僕の歩みを止めようとした。それはまるで「何か」が僕をこの場に引き止めようとするかのように。

意識はしなかった。何も考えてはいなかった。気付いた時には体は向きを変え、出口と反対を向いていたのだ。さらにいつの間にか足取りは軽く、風を切るかの如く走り出していた。

「病院内は走らないで下さい」

すれ違う看護師みんながそう言った。しかし、僕はその指示に耳を貸さず、さらなるスピードで駆けていった。

「橋本!」

手術室前の椅子に座っていた北沢が叫んだ。彼は親子で座っており、その横の椅子には僕の「養父」が座っていた。

「大地」

養父は言い、目を手術室のランプへとやった。それは僕に対する、彼なりの伝達方法であった。ランプは点灯中で、まだ手術中であることが分かる。

僕はそのまま養父の横へ座った。しかし、そこにはいまだ当然の如く隔たりが存在した。何メートル何センチ?もはや言わずとも、皆分かってくれていることだろう。

「もう三時間以上経つが……」

父は祈るように両手を組み、頭を下げたまま独り言のようにつぶやいた。

こういう人間の命が左右される場面では、時間は恐ろしいほどに長く感じられる。その様子は周りの人々、すなわち養父や北沢親子からも感じ取ることができ、彼らは普段よりもわずかながらやつれていた。
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