魔王に忠義を
気を取り直して質問を続ける。

「あの竜巻はお前の仕業か?」

「Ⅵ番は何であのドーラの女の子を襲った訳!?暗殺任務とかって奴!?」

「…質問しているのは俺だ」

「いいえ、私よ」

ニンマリと笑うアイシャにまた溜息。

「…暗殺は失敗に終わった。返り討ちに遭うような構成員はクビだそうだ」

「あらら…お気の毒」

人の不幸をさも可笑しそうに、アイシャは陽気に笑って見せた。

「…俺の質問に答えろ」

「そうよ、さっきのは私の風の魔法」

別段隠す様子もなく、アイシャは簡単に白状した。

「という事は、お前はフーガの貴族か?」

「ううん、平々凡々な只の踊り子」

それでは辻褄が合わない。

「どうやって魔法を手に入れた?踊り子稼業で魔法を身につけられるほどの金は稼げまい」

「失礼しちゃうわねー」

アイシャは膨れっ面を作り。

「でも当たり…踊り子ってさ、街中でばかり踊る訳じゃないのよね…たまには他所の土地の貴族様の屋敷に呼ばれて踊ったり…その屋敷で踊り子以外の仕事も強制されたりね…あーあ、ハインベルト家での仕事は最悪だったわ…」

そう言って物憂げな表情を見せる。

「……」

成程な。

この娘も幸せに人生を送ってきた訳ではなさそうだ。

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