魔王に忠義を
それに。

俺はアイシャの顔を見る。

「ん?」

呑気に見つめ返すアイシャ。

だがこの娘が俺と一緒にいるというのは何かとまずいだろう。

共に行動していれば、当然仲間と疑われる。

本来ならばこの娘がどうなろうと知った事ではないが、一応命を救ってもらった手前、巻き添えを食わせるのは不憫だ。

「お前は今のうちにこの場を離れろ。俺を助ける時に面は割れていないだろうな?ならばフーガ人というだけでは証拠としては弱い。何とか逃げ仰せられるだろう」

「あら」

アイシャは不敵な笑みを浮かべた。

「こんな面白そうな状況から降りろって?冗談じゃないわ。私は逃げようと思えばいつでも風の魔法で逃げられるもの。それに私がいた方が、貴方も逃走手段を確保するのに何かと便利なんじゃない?」

快楽主義者というか楽天家というか。

フーガの人間は細かい事に拘らず、その場の雰囲気で行動する傾向にあるというが、そうなるとアイシャは典型的なフーガ人という事になりそうだ。

厄介者が増えてしまったな…。

頭痛の種が増えた事で、俺は額に手を当てる。

尚の事、この状況からの脱出が難儀になってしまった。

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