魔王に忠義を
俺の隣にアイシャが寄り添う。

「んじゃ行くわよ?」

精神統一するように目を閉じるアイシャ。

その周囲を、風の渦が走る。

次第に大きく渦を巻く清浄なる風。

何者にも穢されず、何者にも止められない。

その風はどこか、アイシャ自身のようにも思えた。

少しずつ揚力を増していく風は、俺とアイシャの身を地面から浮かび上がらせていく。

混血、しかも貴族階級ではない俺にとっては無縁のものだが、こうして間近で見るとやはり驚愕せずにはいられない。

これが魔法の力。

この世界で全てを凌駕するという、古より続く精霊の加護…!

やがて俺達の体は、身を潜めていた林を見下ろすまでの高さに上昇する。

何もかもを見下ろすまでの高さ。

自らが鳥に、或いは世俗を見下ろす神にでもなったような錯覚に陥るようだった。

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