魔王に忠義を
だがそれでも絶対的なこの法則に反して、剣で魔法に勝利する者もいなくはない。

それは扱う者の差。

魔法を行使する者の油断、慢心。

剣を振るう者の熟練、奇策。

魔法が有利ではあるものの、決して常勝ではないのだ。

ならば俺がネルスを凌駕するものは何か。

痺れるような灼熱の空気の中考える。

いや、考えるまでもない。

俺が凌駕できるものは、憎悪。

ファイアルを、ドーラを滅ぼすという幼き頃からの憎悪。

泥水を啜っても、地面に這い蹲ってでもこの世から根絶やしにしてやると誓った。

それに加えて今は…。

俺は炎の洗礼を受けながら、傍らに立つ娘の顔を見る。

…なんて事だろうな。

復讐に生きる俺が、偶然道行きを共にしたアイシャにここまで肩入れするとは。

お前の屈辱、晴らしてやる。

俺はアイシャに、どこか似たものを感じていたのかもしれない。

< 72 / 107 >

この作品をシェア

pagetop