魔王に忠義を
不本意ながら共闘態勢が成立した。

「そうと決まれば」

アイシャがナハトの顔を見る。

「ねぇ貴女、その乗り物ガソリンって燃料で動いてるのよね?」

アイシャの言葉に無言で頷くナハト。

俺はアイシャの抜け目なさに正直言葉を失う。

彼女は自動二輪の燃料を、俺のチェーンソーブレードの為に分けろというのだ。

どこまで図々しいのか。

もしこの事まで計算して共闘を申し込んだのならば、俺はアイシャという娘の逞しさを少々甘く見ていた事になる。

そして。

「…………」

ナハトはアイシャの身につけている衣装を上から下まで見て一言。

「貴女とは…服の趣味が合いそう…」

ナハトへの印象も、少々改める必要がありそうだ。

とはいえ、お陰で俺も憂いなく戦闘を続行する事が出来る。

…アキラがチラリと俺の顔を見た。

「そういう訳だ。魔王を何とかするまでは見逃してやる」

「…了解した」

互いぶっきらぼうながらも、最大限の意思疎通だった。

悠長にコミュニケーションを取っている暇はない。

今は封印の地へ。

それが何よりの急務だった。

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