魔王に忠義を
ナハトとアキラは自動二輪で地上を、俺とアイシャは風の魔法で空を。

全速力で封印の地へと向かう。

それを阻むかのように吹き荒れる突風。

ただの風ではない。

風に悪意のようなものを感じる。

淀んだ空気というか、濁った気流というか。

ドーラ地域で見られるような汚染された空気とは訳が違う。

肉体的にではなく、精神的に干渉されるような汚染。

真に邪悪な者がこの世界に姿を現すというのは、こういった影響をもたらすものなのか。

「見て、ヴァン」

飛翔しながらアイシャが眼下を見やる。

草原のところどころに、黒いローブを纏った男達が倒れている。

目玉をひん剥き、言葉に表せないような恐ろしいものを見たかのような、苦悶の表情で絶命している。

恐らくは秘密結社の魔法の使い手。

封印破りを得意とする、今回の騒動の実行犯だ。

そして彼らは直接、封印から這い出してきた魔王の『悪意』を浴びた。

この世の全ての悪を具現化させた邪悪の権化。

その悪意を、ただの人間の身で浴びたのだ。

精神が保てる筈はなかった。

< 86 / 107 >

この作品をシェア

pagetop