魔王に忠義を
魔王の間合いでは反撃も儘ならない。

俺とアキラは一旦その懐から離脱した。

あまりの猛攻。

そして想像を絶する耐久力と生命力。

俺達が一太刀二太刀与えたところで、魔王の腕は弱る気配すら見せない。

「四英雄や六英雄は、どうやって奴を倒したのかしら…」

アイシャでさえ弱音にも似た台詞を吐く始末。

それほどまでに魔王は圧倒的だった。

…四英雄も六英雄も、多大な犠牲を払いながら魔王を退けたという。

それは、俺達も命を捨てて魔王に挑まねばならないという事なのか。

誰かの犠牲なくして、魔王を仕留める事などできぬという事なのか。

「ならば」

俺はブレードを両手で握り締める。

「俺が奴の懐で注意を引く。火の玉、何とか致命傷を叩き込め」

「な…」

アキラが目を見開いた。

…元より復讐以外に目的のない人生だ。

更には元秘密結社の人間として、多少なり魔王の復活には責任も感じる。

再び魔王を地の底に押し返すのに人柱が必要だというのならば、俺こそが適任ではないか。

「…ヴァン、貴方!」

アイシャが俺の襟を掴む!

「それかっこつけてるつもり!?ファイアルとドーラに復讐果たすんじゃないの!?」

「…不本意だが、犠牲は必要だろう」

ブレードを構える。

「せめて犬死にはさせるなよ」


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