魔王に忠義を
その数、三千は下らない。

封印の地を埋め尽くすほどの兵士の数。

その兵士…生まれも、生活する場所も違う異民族同士が、共通の敵に対してその武力を振るっている。

志は一つ。

打倒魔王。

剣が、大砲が、矢が、魔法が。

次々と魔王の腕に命中する。

さしもの魔王の腕も、これ程の数の兵が相手では劣勢を隠せなかった。

完全復活しているならまだしも、片腕だけの状態だ。

如何に一人一人がちっぽけな人間だとしても、数で迫れば魔王をも圧倒する事ができる。

「……」

俺はブレード片手に、その光景を見つめていた。

…見ているか、父よ、母よ。

貴方達を死へと追いやった二つの民族さえも、やっと目を覚ましたようだ。

手を取り合い、共通の敵に対して立ち向かう。

もう少し早くにその事に気づいていれば、両親も死なず、俺も迫害される事もなかったろうに…。

いや…今更そのような事を言っても詮無い事だ。

これまでの人生で歪んだ俺の性格は元には戻らんだろうし、死んでいった両親も甦らない。

今は…目の前の争いの元凶を打ち滅ぼすのみ…!



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