心 ―ハジマリノウタ―




「悲しい、か…」




再び空を見上げたリヴィアは

呟いた。


吐く息が白い。


リヴィアの息も、私の息も

そのまま

空に紛れて消える。




「そうだね、確かに悲しい。

確かにショックだったし

今でも傷は疼くよ」




しかし、リヴィアは笑った。


私のほうを向くと、

優しく微笑んだのだ。




「でもね、あたしは嬉しいんだ」



「嬉しい…?」




私には分からなかった。


リヴィアの過去は、間違いなく

苦しくて、悲しいもので。


リヴィアに癒えない傷を与えた。


それなのに、何故?






< 200 / 534 >

この作品をシェア

pagetop