白球ノート


ヒデの球が安定して、
指示通りのボールが投げられるようになったときは
学年みんなで大騒ぎした。


部活が終わって、
駅前にあるファミレスで夕飯を食べて、
帰りにみんなでプリクラを撮った。


未だにサオの携帯の待ち受けはあの時のプリクラ画像のまま。


サオの待ち受けを見て、
私もつい最近待ち受けをあの画像に戻したの。


来年の夏が終わるまで
この待ち受けでいる。


願掛けみたいなものかな。



サオがグラウンドの外で見守る中、
地区大会の1戦目が始まった。



プレイボール!
と空まで響く声と共に、
ヒデが息を飲んだのがわかった。


左足を上げ、勢いをつけて踏み込む。

振り下ろされた手から音を鳴らしてボールが走った。


ボールの回転する音が好き、
いつかサオが言ってたよね。


ヒデの第一球、
聞こえた?

サオの好きそうないい音出してたよ。


そのままサクちゃんのミットに吸い込まれるように、
ボールはど真ん中へ突き刺さった。


「ストライク!」


審判の声が響いて、すぐにサオに目を向けたら飛び跳ねてたよね。

私は見てたぞ。
見逃さなかった。

跳びはねながら涙を流していた所。


見逃さなかったよ。


嬉しかったよね?
私も嬉しかった。

ヒデのエースナンバー第一球がストライクで、
誰もが喜んだ瞬間だった。


成長したヒデを誰もが認めた瞬間だったよね。


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