職場内恋愛





「さ!優作さん!!

デート本番行きますよ!」


廊下にあったイスに座って待っているとそんな明るい声が聞こえた。



『え…?もう、いいのか?』

そう首を傾げると



「何がですか?

それより早く行かないと夜になっちゃいます!」


奈々は無理矢理俺を立たせると腕を取って歩き出す。



なんだよ…この状況。

さっきまでと全然態度が違うじゃないか。


何が…どうなってるんだ?




「どこ行きますか?!」


奈々はシートベルトを締め、俺を見る。



『なぁ…奈々』

俺はまっすぐ前を見つめた。



『美優と何を話した?

なんでさっき泣きそうな…「優作さん」


奈々が真剣な顔をして俺の言葉を遮った。




「お願いです。

何も聞かないでください。


私が言えることは…何もないんです」


苦しそうに顔を歪める奈々。


でも、すぐにいつもの笑顔を浮かべ言った。



「もうこの話は終わりです。

楽しく行きましょう!!」


そんな言葉に頷くしかない俺。


でも、仕方ないだろう。

奈々が言えない、って言うんなら。


俺は奈々を信じてる。



車が動き出す。


遠くなる病院。

遠くなる美優。


もう2度と、お前に会うことはないだろう。

できることなら友達としてまた付き合いたかった。



でも、それはきっと奈々を傷つけることになる。

それだけは…イヤだから。


ごめんな、美優。

俺は途中で逃げ出すような男だった。


だけど、今は違う。

もう逃げ出さない。


最後まで奈々を愛す。


お前に…美優に誓う。

だから安心してお前はお前の幸せをつかめ。



俺は心から願ってるよ。



じゃあな、美優。









< 197 / 425 >

この作品をシェア

pagetop