職場内恋愛
壇上に立った京地が真っ白い紙を開く。
そして一礼して答辞を始めた。
「窓辺に差し込む日射しも和らぎ、小鳥のさえずりにも春の訪れを感じます。
時の流れは早いもので、今日、卒業式を迎え、一人一人の胸に楽しかったこと、苦しかったこと、いろんな思い出がよみがえってきます。」
ありきたりな始まり。
だが、ここから始まるのだ。
京地真ワールドが。
「3年間はホントにあっという間でこんな短い間に語ることはできません。
楽しかったこと、
苦しかったこと、これでもか、ってくらいにたくさんあります。
泣きたいときも
叫びたいときもたくさんありました。
でも、それでも私たちは笑いました。
それは純粋にこの中学校での生活が楽しかったからです。
辛くて笑えない日ももちろんありました。
泣きたくてみんなと一緒にいるのがイヤな日もありました。
だけど、私たちは学んだのです。
苦しくても辛くても泣きたくても、立ち止まってはいけないことを。
この中学校で知ったのです。
私たちは立ち止まらず、歩き続けなければならないことを。
もしここで、立ち止まってしまえば明日が変わってしまう。
それはきっと…ダメなほうに変わってしまう。
大人に近づくにつれて悩み事は増えていきます。
だからってそれでイチイチつまづいていてはいけないのです。
私たちの…いや、少なくとも私は3年間でそのことを学びました。」
京地は1度言葉を切る。
卒業生の大半が、泣いていた。
それなのに壇上の京地はなぜか微笑んでいた。