唇。
お昼。
既にノックアウトの状態。
お母さんが作ってくれたお弁当を広げて、深い溜息。
手はお箸とマウスを交互に持ち返る。


「疲れてるね~。」


大丈夫?と問う姉に、頷いて無事を伝える。


「も、無理ぃ…訳解んない。」

「最初はそんなもんだよ。」


カチカチと姉もネットを繋いだ。
うう…帰りたい…。




午後の仕事が始まれば、しんと静まり返る事務所内。
電話が鳴る度、驚く。
三時を回れば。


「お疲れっす。」

「お疲れ様です。」


がやがやと事務所内が活気付き始める。
現場の人が戻って来たらしい。


(うわ~ん!怖い~!!)


第一印象…柄悪ッ!!!!!!!
声が大きいし、言葉が激しい。
しかも、ちらちらとこっちを見てくる。
聞きたい事あるなら聞けよ!!!!


「お疲れ様~。」


内心、あうあうと慌てながら、横に立った男の人を見上げる。
何か、飄々と毒吐きそうな人。


「お疲れ様です。」

「何、これが噂の妹?」


男の人は、姉に何かのデータを渡しつつ、あたしを指差した。


「そです。三月ちゃんです。」

「ど、どうも。」

「あ、どうも。」


そう言って、姉と二言三言交わすと、何処かへと去って行った。


「だ、誰?」

「ん?飯田さん。下請けの人。」

「飯田さん、ね。」


この時は、なかなか気が合いそうだな、と思っただけ。
後々、この人に色々とお世話になるとは、露程も思ってなかった…。
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