求命
家に帰り、明日の準備をはじめた。
この季節、昼間でも日陰ではかなり冷え込む。そんな中、一日中外にいるわけだから、それなりの準備をしなければ風邪をひいてしまうだろう。まして、一日中外にいるなんて、ここ数年なかった事だ。体がついていかないかもしれない。明日の初仕事にケチがつかないように、念入りに、そして用心深く様々なものを鞄に詰めた。
着替えの洋服や厚手のセーターはもちろん、使い捨てカイロや簡単な食事が取れるようにとお菓子の類も入れておいた。さらには、まず使わないであろう懐中電灯やロープ、爪切りまで入れる始末だ。
「これだけ準備すれば大丈夫だろう。」
机の横に置いた鞄は大きく膨らみ、色が赤い事も手伝ってまるでダルマのようだ。そのダルマの隣に目覚まし時計を置き、大伍は眠りについた。
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