図書室の朱、霧雨の空。
Le premier mouvement

♪Fracture du déjeuner

 クラスの中に、一人くらいはいるんじゃないかな。ほら、いるのかいないのか分からないような、印象の薄い子。
 存在感がないっていうかね、暗い感じの子。
 あたしにとって、それがアタルだった。

 高校に入って最初の年、あたしは初めての高校生活にわくわくしていた。みんなだって初めはそうだったんじゃない?
 真新しい制服に身を包んで入った知らない学校。
 そして、知らない教室、知らない先生、知らないクラスメイト。
 さあ、今日からどんな学校生活があたしを待ち受けているんだろう。そう思うとわくわくした。
「どこ中から来たの?」
 なんてことを後ろの席の子に聞いてみたりして、友達作りのきっかけを探したりもした。
 けど、時間が経ったら自然と気が合う子同士でグループができて、いつしか一番最初に話したはずの後ろの席だった子ともほとんど話さなくなった。
 適当なグループに入って、適当な友達関係を作って、適当な彼氏を作った。
 グループ、友達、彼氏。あんなにわくわくしていた高校生活なのに、どれもこれも適当。
 そう、適当なのだ。
 友達だって上っ面だけ。内心では何を思っているのかわからない。
 そんな中学の頃とあんまり変わらない生活が、ちょっと残念に思ったりもしたけど、まあそれはそれで楽しいからいいやって思ってた。
 時々、ドッと疲れることもあるけどさ、いじめとか、そんなことされるよりは、上辺だけの友達関係を続けてる方がマシじゃない。
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