相合傘



「でね~、薔薇の花束買ってった人が連れてた犬がさ~、本当に可愛くてねぇ~」
「へー、そう」
「む、ちゃんと聞いてない!」
「聞いてます」

バイト先が同じで、バイトが終わる時間も同じで、しかも家がお隣ってなれば、自然と一緒に帰ることになってしまうということは、大体想像していた。
…そして、買い物についてくるだろうという事も。
…そしてそして、

「今日、海老チリ食べたいなー」

食事のメニューのオーダーをしてくるであろうことも…。

「あー、はいはい…」

俺はスーパーに入って、鮮魚コーナーに置いてある、むき海老が入ったパックを籠の中へ。
海老12匹で、498円。
インドネシア産なのに、いい値だこと。

あとは、明日の朝食と夕飯に使う食材もちょこちょこと買って、レジへ。
アキちゃんは朝食や夕食の準備の手伝いとか、何もしないけど…ほら、

「貸して」

荷物は家まで持ってくれる。
ま、このくらいは、してもらわないとな。
西の空はまだ明るく、東の空には微かに光る一番星。
ちかちかと瞬きをしている街灯の下を歩きながら、俺はアキちゃんを見上げてみた。


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