君だけに夢をもう一度
正和は、福岡で生まれ育った。

家は洋服店を営んでいて、両親と姉、正和と四人家族だった。

小学生になると、よく父親から平和台球場にプロ野球観戦に連れて行ってもらった。

プロ野球選手が、華麗な守備や遠くへボールを飛ばす姿を見ると、自分もあんなふうになりたいと憧れた。
それ以来、学校から帰ると、いつも近くの空き地で野球をするのが日課になった。

子供の頃に将来なりたい職業と聞かれたら、『プロ野球選手』と、真っ先に答えた。

しかし、その夢も中学生になって消えた。

野球部に入部したが、自分より野球センスのある人間がたくさんいることに気づいた。

小学生からリトルリーグで活躍している部員と、自分とを比べるとレベルの差は歴然だった。
打つて、守って、走れる。
すべてが正和より、上の人間ばかりだった。

それでも、努力してなんとか上手くなれると信じた。
そう思って頑張ったが、一度も試合でレギュラーにはなれなかった。

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