君だけに夢をもう一度
「私は、正直嬉しかったの。初めて自分が自分らしく生きられる場所に来られて、そこでサザンの演奏をしていた正和に出会えたことも・・・・・・何か不思議なめぐりあわせを感じちゃった」

酔った敦子が笑顔で言った。

「だって・・・・・・一番、やりたかった音楽をやっていた人と出会えたのよ。大げさかもしれないけど、私の人生を変えてくれる人かもしれないと思ったの」

「そんな君の人生を変えるほど、自分は大それた男じゃないさ」
正和が苦笑いして答えた。

「どうして、そんなこと言うの? 」
敦子が甘えるように尋ねた。

「恋人でも、同じ音楽をする人間から見ると、君はライバルだと思っていたからだ」
「・・・・・・」

「だから、付き合ってた頃は、君のことは心の中じゃ認めていても言葉では、決して認めたようなことは言いたくなかったんだ」
正和が真面目な顔で言った。

「そうだったの・・・・・・」
敦子は、正和が自分に対してへの本音を聞いたような気がした。

「私のことを、そんなふうに思っていたの・・・・・・」
敦子は、寂しい表情で言った。


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