彼と彼女の方程式
「…遥にも、そう想える奴がいたんだ?」
あたしの方には目を向けずに座ったまま、そう呟いた。
『はいっ!!?』
そう想える奴って……。
一緒にいたいって想える人って事だよね?
何も言わない湊。
どんな顔して聞いてんの?
あたしには俯いた湊の後頭部しか見えない。
『…そりゃ、好きな人の一人や二人いたわよ。
…今まででいないって方が珍しいって。』
「…だよなぁ。」
いまだにこちらに振り向こうとはしない湊を不思議に思い、ゆっくり隣に腰を下ろした。
『湊?
何が、言いたいの?』
――っ…!!
やっと振り向いた湊との距離が近くてドキッとしてしまった。
まぁ、あたしが隣に座ったんだけどさ…。
「…教えてよ。」
『…はっ?何を?』
少しだけ、不自然じゃないように、湊との間隔を広げながら聞き返した。