気まぐれお嬢様にご用心☆
「その後、輝様はお二人を残したままこの家を出て行ってしまいました」
そんでじいちゃんが面倒見てるってわけか。まぁ……そんなことがあれば人を信用するってことさえもままならないよな。

「すみません、お仕事中呼び止めちゃって。ありがとうございました」

「いえいえ。どういたしまして」


なるほどな~。俺はすごい事実を知ったのかもしれない。あいつもそれなりに苦労してたんだな。お嬢様って大抵は何も不自由なく暮らしているとばかり思っていたから。意外な一面とでも言うところだろうか。

しかし俺にとってはもう一つ頭を悩ませることがあった。それは……学生にとっては一大イベント『三学期の期末試験』が迫っていることである。

「追試……」

案の定、俺はその成績の悪さから『追試』を受けるハメになってしまった。因みにに翼は学年トップ、楓も三位だった。
しかも!その追試は、全教科六十点以上採らないと来年留年というなんとも厳しいものだった。俺は留年なんて御免だっ!こんな恰好をあと一年も多くやらなきゃならないなんてそんなことは絶対できない!!死んでもここは追試をクリアしなきゃならないんだっ!!
……と意気込んでも俺一人じゃもはやこの問題はクリアできない。どうすればいいんだぁ~!



「家庭教師になってあげましょうか?」

「へっ?」
それは今のこの状況の俺にとっては、神のような翼の声。
聞き間違えではないかと一瞬、耳を疑ってしまう。

「だから~私が勉強教えてあげるわよ」

「あっ……ありがとう」
まさかこんなことになるなんて予想もしてなかったのでちょっと緊張している自分が居た。

「あなたが留年なんてなったら、例え居候でも桐生家の恥ですからねぇ~」
なんだ、そんな理由か……。少しだけドキドキした自分がバカらしくも思えてくる。

「じゃあ!早速、今晩からねっ!」

「こっ今晩?」

「当たり前でしょ!追試まで一週間しかないんだからっ!!スパルタでいくわよ!」

「あ……ハイ」
流石に学年一位の翼には今の俺は頭が上がらなかった。


「ほらっ!!ここは過去形じゃなくて現在進行形でしょっ!」

「ハイ……すみません」
翼はすごく真剣に俺に勉強を教えてくれた。その理由がどうであろうと単純に嬉しかった。
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