気まぐれお嬢様にご用心☆
「千晶のばかっ!」

俺は薫の背中を追いかけることができなかった。
それはきっと……。

「ちょっとやり過ぎたかな」


楓が居たから──。


「まぁ……あれくらいはやらないとな。薫もこれで諦めてくれれると思うし」

「後悔してる?」

「……いや。全くしてないと言えば嘘になるけど。薫のためにもこれでよかったんだよ」

「違う……私が聞きたかったのはキスしたこと、後悔しているのかな~って」

「それは……。だけどなんで俺なんかにキスしたんだ?いくらでも拒否る方法はあったのに」

「千晶に……千晶にキスしたかったから……かなっ。自分でもよくわからないんだ~」

「なっなんだよ、それ!」


「……好きだよ、千晶」


「えっ……」

「冗談っ!!冗談に決まってるでしょ!すぐ千晶は本気にするんだから~っ!」

時々、彼女の『冗談』をどこまで信じたらいいのか分からなくなる。

「お前なぁ~俺をからかうのもいい加減にしろよ」

「もう一度、キスしようか?」

「なっ何言っているんだ?今度は騙されないからな!ほら、馬鹿なこと言ってないで帰るぞ!」


「……私じゃダメかな?」


「楓……」
俺は彼女のさっきとは違う真面目な顔にどう反応したらいいのか分からなかった。

「これは本気だから!考えておいてよねっ!」

「……えっ?」

余りにも意外過ぎて頭ん中の思考回路も完全に停止していた。楓に念を押されるといつも返事してしまうのは俺の意思が弱いからなのか?

それとも……、

自分の気持ちに整理をつけるにはもう少し時間がかかりそうだ。
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