気まぐれお嬢様にご用心☆
「翼さんがは双子なんですってね!妹の名前は『楓』!二人して私を騙すなんてひどい!最低よ!」

「薫とは幼馴染みで居たかったから……こんなやり方自分でも最低だと思っている。でもこれしか方法がなかったんだ。お前を俺のせいでもう不幸にしたくないから。幸せになってほしいから」

薫は自分の肘に手を当てた。
『不幸』……。
この言葉が彼女の過去を全て呼び起こした。

「千晶……全然変わってない。優しすぎるよ、私のこと嫌いならはっきりそう言えばいいのに!言ってくれなきゃ分からない、伝わらないよ」

「ごめん」

ただ謝ることしかできなかった。
『幼馴染み』って言いながら、俺は逃げていた。
薫を傷つけるのが怖くて逃げていたんだ。

逃げてばかりじゃ変わらない。

自分の意思を『言葉』で伝えなきゃ、何も変わらない。
だから──、

「俺は薫とは付き合えない……」

「最後まで嫌いって言ってくれないんだね。そうすれば諦めつくのに、ズルイよ……千晶」

彼女のこと『嫌い』と言ってしまったら今まで全てが『無』になってしまいそうで。

言えなかった。

今の俺にはこれが精一杯。自分の殻を破るにはもう一歩努力が必要のようだ。



『付き合えない』=『嫌い』という方程式は果たして成り立つのだろうか。

薫のことは嫌いじゃない。
寧ろ『好き』だ。

なのに付き合えないのは、その『好き』が『愛』じゃないから……。



恋愛って難しい。
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