婆ちゃんの恋物語
一週間が過ぎ、諦めに似た空気が、それぞれの部屋に流れてたん。
勝手に月日は、流れて行く、心だけ置いてけぼりにして、

会いたいと口にも出来ず、ただ、靖ちゃんの後ろをごそごそついて歩いてた。


7月に入った日、何曜日やったやろ、大阪市電も通勤以外乗車禁止になったらしいって、麓の農家の人が、教えてくれたん。

「探しに行きたいなあ。」

「行きたいけど、行かれへん。」

「大阪どないなってるんやろか。」

「帰りたいけど、恐いなあ。」

「あの二人帰って来たら、一回、連れてってもらおな。」

「そやなあ〜、」





7月17日火曜日、友引
その日は、うちと靖ちゃんにとって一生忘れられない日になったん。

配給を巧君のお父さんと他の数人が、麓まで貰いに行ったん。一割減になるらしいと、先週辺りから聞いて、仕方ないと話してたんやけど。
夕方、何時もの時間になっても、皆が戻ってこうへんかったん。

女と子供ばかしになった、この空き家の各部屋は、時が過ぎていくたびに、不安が増して、静まり返ってたん。

「おーい、おーい、」

暗くなりかけて、帰って来た人達が、呼んでたん。

リヤカーに荷物と戸板と誰か人が乗ってたん。暗くて良く見えへんかってん。
一人は、戸板に寝てるんやろか。
一人は、戸板の横に座ってた。


「麻ちゃん、あれ、誠さんちゃう。」


靖ちゃんの声聞く前に、はっきり、姿みれたん。肩から布で手を吊してた。
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