俺様王子の秘めゴト
3、犬より昇格?!

個展

パチンパチンと鋏の音が聞こえる。



「…苦しい…。」



帯を叩きながら呟いた。



「我慢だ華南。」



…うざ。



ドアに寄りかかりスーツ姿で立ってる男。



英(すぐる)にぃ。



「個展をやる限り、いや、華道をやってる限り着物からは逃げられねーよ。」



とケラケラ笑う。



じゃぁあんたも着ろよ。



華道家元の息子なんだから。



玖城先輩からの解雇通告から3日後。



私はホテルにいた。



ホテルの宴会場。



何故ならこの場所が個展会場だから。



回りには私が活けた花ばなが並べられ、その会場のはじっこに私達はいた。



「お父さんは?」

「挨拶回り。何しろお前の初個展だからな。」



展示会は既にオープンしていて門下生や一般の方達が出入りしている。



私達がいる反対のはじっこで門下生の一人が実演中。



「あっそ。」

「そっけねーな。お前も挨拶回りしろよ。」



やだよ。



だるいじゃん。



「い~の!」

「何が。」



英にぃが五月蝿くなって歩き出す。



会場内は思ったよりも賑わっていて正直恥ずかしい。



「あら、華南さん。」



捕まった。



これが嫌だから端にいたのに。



嫌々愛想笑いし挨拶する。



内心はウザいと思いながら。



そんな私を後ろからケラケラ笑って抜いていく英にぃ。



腹立つなぁ。



「では、私はこれで。」


「あ、はい。ごゆっくり見ていってください。」



頭を下げて逃げ出す私。



会場を出て一息つく。


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