DOLL・・・ ~秘密倶楽部~
結構大きな
建物なんだ...
建物の最下層で車を
降りたあたしは
建物の全体像をエレベーターの
ボタンの階数で把握する
エレベーターの扉が開くと
今度は通路の左側だけに
扉が並んでいる
地下でのトラウマで
体が勝手に身構えてしまう
手前から数えて三番目のドアに
鍵を差し込む飯岡
「ここが...
お前の部屋だ」
あたしの...
部屋...?
中を覗き込むと
柔らかなベージュ色を基調とした
部屋のど真ん中に
真っ赤なソファーベッドが
まるで自分の存在感を
轟かせるように鎮座している
「ここで...
指名を待つんだ...」
指名...
小さく肩を落とす
あたしの横で淡々と
説明を続ける飯岡
「食事はいつでも好きな時間に
この食事用エレベータから
運ばれてくる...」
飯岡の話によれば
体形や健康面の管理も含め
DOLLにはカロリー計算された
健康的な食事が提供されるらしい
食べたいものを部屋に設置された
内線電話でスタッフに伝えれば
隣接するホテルの厨房から
食事用のエレベーターで
運ばれてくるらしい
他にも、外出することが
許されないDOLLは
内線電話を使って
必要なものを手に入れる
トイレにシャワールーム
クーラー、TV、冷蔵庫、
その他、生活に必要なもの全て
設置されていて、確かに
飯岡の言う通り身一つで来ても
何も困らないが外部に発信できる
電話やパソコンは見当たらなかった
「DOLL契約期間中は一切
外部との連絡は取れない
これまで使っていた携帯は
事務所で預かり、代わりに
こちらが用意した携帯を
使ってもらう」
飯岡が真新しい携帯を差し出す
あたしはそれを受け取り
代わりに自分の携帯を差し出た
「他にもまぁ、色々あるが
追々な...」
一度に言っても
絶望感を深めるだけと
悟った飯岡は
一度、乙羽を落ち着かせる為
部屋を出る
一人きりになったあたしは
外の空気が吸いたくて
窓を開ける
窓の外は都会らしく
隣のビル壁が間近に迫り
景色といえば無機質な
隣のコンクリートの壁だった
ぁたし...
今日からココに...?
絶望感で身体が震える
事務所に着き、写真を撮られ
部屋を与えられる
物事が一つ一つ
現実味を帯びてくると
自分の中にだんだんと
恐怖が現実に...
ぁたしホントに
耐えられる...?
自分が出した決断が
正しいのか...
そうじゃないのか...
もう、ずっと考えてる
考えたって答えなんか
あるわけないのに...
ガクガク...
膝から力が抜けるように
床に崩れ落ちる乙羽